パラレル小説


□籠の外は籠だった
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 あれから数カ月。
 俺は外に出られることになった。
 それというのも、ここと密につながっている財界のお偉いさんが商売敵の抹殺や自分のボディガードのために俺が欲しいと言ってきたからだった。
 もちろんタダではない。
 キセキの世代と呼ばれている以上、それなりの額を払って引き渡される。
 俺もそれは承知で引き受けた。(とは言っても自分に選択権はないが)
 青峰っちは静かになってせーせーすらぁと失礼なことを言ってきた。
 緑間っちはとっとと死んでしまえと更に酷い事を言ってきた。(これには正直泣きたくなった)
 そして赤司っちは、あの日以来顔を合わすこともなく、おっさんを殺した罪に問われることもなかった。
 
 というと語弊がある。
 なんでも赤司っちは随分前から武器やらなんやらに興味を持っていて、何気なくそれを漏らしたら条件付きでOKが出たのだ。
 それがあのおっさんを殺す事。
 なんでもあのおっさんは横領を繰り返していて、クビにしようとしたところここのことをバラすと逆に脅してきたらしい。(すごい神経ッスね・・・)
 それでしょうがないじゃあということで、赤司っちに命が下ったわけである。
 なんともおぞましい話だ。(人のこと言えないけど)
 
 シャワーを浴びて、今まで着たこともない豪華な服に袖を通す。
 なんだかソワソワして落ち着かなかった。
 前にいい暮らしをしやがってなんて思ったりもしたけれど、やっぱり変に豪華なのもムズムズする。だからといってあの黒服は二度とごめんだ。
 引き取り手に会うために案内された部屋に、なにやらいい匂いを漂わせるビンが置いてあったので、興味本意でフタを開けて嗅いでみたら、開けるまでわからなかった強烈なにおいが鼻をかすめた。花の匂いらしいが、どうにも我慢ならなかった。
 まだ血のにおいのほうがマシだ。
 引き取り手、はたまた主人とでも言うのか、海常と言うグループの幹部の一人である笠松という男がやってきた。
 第一印象、小さい。
 自分が大きいのもあるが、やっぱり小さい。でも威厳がある。
 殺されたおっさんと比べたら失礼なくらい人間ができていそうだ。
 まあ、こんなところ知っている時点できな臭いけれども。
「海常の笠松だ」
「黄瀬ッス」
 とたん殴られた。
 えええーーー?
 別によけられなかったわけではない。
 ただ相手に恥をかかすなと言われていたので、殴られた方がいいと判断したのだ。
 だが、自分はなぜ殴られたのだろう。納得いかない。
「なんだそのふざけた自己紹介は」
 あ、それ?
「は、はあ」
「なんだと聞いているんだ」
「名前言っただけっす」
 さらに殴られた。なんで?
「わかってんだよそんなこと」
「ハ、ハイ・・・」
「いいか、聞いてるだろうけどお前はな、これから俺らのボディーガードになるんだ。俺達の社交場でそんなふざけた挨拶をしてみろ、信用なんてすぐに無くなるんだからな」
 じゃあ初対面を殴るのはいいのか、とはとてもじゃないけど聞けなかった。
 それからニ、三適当な言葉ををかわし、外は寒いからとこれまた上等なコートをもらった。
 何の嫌がらせか、コートの色は黒だった。

 もしかしたら、彼女はここを出るとき白のコートをもらうんじゃないだろうか。
 なぜか、そう思った。
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