パラレル小説
□籠の外は籠だった2
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朝は誰よりも目が早く覚めることが取り柄だった早川は、昨日入ったばかりの黄瀬に先を越されたことにショックを受けた。
なんでもボディーガードだという黄瀬を、微妙に敵視した面持ちで見つめていたものの、いつまでも一番に起きれなかったことを悔やんでいても仕方がないと、しぶしぶ朝食の席についた。
森山、小堀はいるものの、まだ笠松と黄瀬は来ていない。
挨拶をかわし、二人を待つ。
「それにしても、あんなイケメンがボディーガードだなんて、俺に女の子が寄って来なくなるじゃねーか・・・・」
そううなだれる森山に、
「まあまあ、俺らからすれば森山だってイケメンだぜ?」
と小堀がフォローを入れる。
「そうですよ。オ(レ)なんて眼中にも入(り)ませんって。森山さん自信持って下さい!」
「ごめん何言ってるか分からない」
負けじとフォローを入れるが、一言で切り捨てられた。
それにしても、庭で見かけた黄瀬はどことなく、自分たちとは違うような気がした。
職業が違うからだろうといわれればそれまでなのだが、どうにもそれだけでは説明できないような何かがあるような気がした。
幸い今本人はこの場にはいない。
ヤツのことを聞くなら今だ。
「あの、森山さん・・・」
「悪ぃ。遅くなった」
自分の言葉をさえぎり入ってきた笠松。
その後ろには、昨日付けでボディーガードになった黄瀬。
早川は全身の毛が逆立つのを感じた。
(?!―――――)
なんて言えばいいのだろうか。
明らかに違う。異質。
森山の言っていた通り、嫌になるほど整っている端正な顔立ちをしているのに、なぜか周りに溶け込んでいない。
まるで間違ったピースをパズルにはめ込んでしまったような。花びらと茎の色を逆に塗ってしまったような。神よりも悪魔が崇高な存在として崇められているかのような。
そんな、違和感。
黄瀬はそんな自分を見て、少し驚いているかのようだった。それから気のせいだと思うが、一瞬表情を凍らせたようだった。
全員が席についた。
笠松が口を開く。
「全員知ってると思うが、昨日付けでボディーガードになった黄瀬だ。これから何かとこいつの世話になる、が」
言葉を切って黄瀬をにらむ。それに対して黄瀬は少しぎょっとしたような顔をして、それから諦めが浮かんだ。
「こいつは礼儀作法がちっともなっちゃねぇ!だから基本ボディーガードだとバレないようにこいつに色々仕込まなきゃならない。つーわけで早川、お前こいつの教育係な」
「え?オ(レ)ッスか?」
まさか自分が指名されるとは思ってなかったため、驚きを隠せない。
笠松は異論はないなという目で見つめてくる。それには逆らえない。
黄瀬はと言うと、
「よろしくお願いしますッス!」
と少年らしい無邪気な笑みを浮かべていた。ぴりっとした空気には、全くにあっていなかったけれど。
おそらくそれを感じとれたのは自分だけだと、早川は直感した。
きっと今夜は嵐だろう