パラレル小説
□籠の外は籠だった2
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礼儀だの一般常識だの、法律だの倫理だの。
そんな物には今までずっと無縁だった俺を更生(?)させるべく付いた教育係は、きっと俺と同類で、すごく運のいい奴だった。
「だか(ら)そこはネック(レ)スがあなたの美しい肌に映えてとても美しいだ(ろ)!」
異常なほどに早口でなければ。
遡ること一時間前。
「黄瀬、お前は一体今までどんな生活送ってきたんだ!こんな常識的なことも知(ら)んのか!」
「そういうことに縁の無い生活っす。ちなみに常識とか全然わかんないっす。挨拶くらいならできるッスけど」
「じゃ、やってみ(ろ)」
「はじめまして、黄瀬ッス!」
「ぜんぜんできてねーじゃねーか!」
さすがにこの鉄拳はよけた。下手な傷を増やしたくはない。
「よし、一から叩き込んでや(る)!」
ここから熱血指導が始まった。
かなりスパルタではあったが、体力には自信があるから問題はないのだが、
「集中が切(れ)て(る)ぞ黄瀬ェ!」
慣れないことを一度に覚えるというのは、やはり辛いものがあった。
慣れてることといえば――――
「なあ黄瀬」
「? なんスか?」
「お前、人殺したことあ(る)か?」
空と海の青は違う。
はじめはとても澄んだ青で、下に行くに連れて、どんどん濃く深くなっていき、次第にグランブルーと呼ばれる色にまでなる海と、太陽の明るさや気候条件などによって薄くなったり、赤を交えたりする空。
同じであるのに、同じじゃない。
それは何事にも当てはまる。
限りなく近いところにはいるけれど、同一と呼ぶには語弊がある。
そんなどこかむずがゆいものが、最近気になる。
あの日見た黄色と自分はそれに近い。
似ているようで似ていない。
交わっているようで交わってはいない。
共通していることは、互いに手あわせをしてみたいと思っているところだろうか。
あいつだって人を何人も殺している。それは僕も同じだ。
風のたよりで聞いたけど、あいつは外に出たらしい。僕にもそんな日が来るのだろうか。
きっとそれは叶わない願い
無駄な希望など、持たないほうがいい。