小説
□火神が黄瀬を変人だと思った訳
1ページ/1ページ
「にしてもキセキの世代って変人ばっかだよな」
マジバで火神がふと漏らした一言。
それに対して黒子は思案する。
確かに緑間のラッキーアイテムなどを見ると、そう思えるのも頷ける。
あれはさすがにどうかと思う。
だから火神に対して、
「それは今更な気もするんですが・・・・」
と、言うしかなかった。
「まあそうだけどよ・・・」
と、曖昧な返事を返す火神だが、黒子は少し気になって聞いてみた。
「どうしてまた急にそんな事聞くんです?」
「いや、初めて黄瀬にあったとき、親友を変なあだ名で呼んでんなと思ってさ」
火神は黄瀬に「っち」をつけて呼ばれるのを嫌う。ただ、だからといってそれで人を変人扱いするのもどうかと思う。
いくら沸点が低いとはいえ、火神もそこまで子供ではないだろう。
「まあ確かに人の名前に「っち」つけますからね」
「いや、それじゃなくて、それもあるんだけどよ」
「? なんですか」
「黒子っちがコックロッチに聞こえたんだよ。だからひでえ野郎だなぁと」
コックロッチ・・・・
なんだろう、この可愛気があるようでおぞましい響きは・・・・
コックロッチ・・・コックロッチ・・・
脳裏に黒くしぶとい生命体が浮かぶ。
・・・・・・ゴキブリ?
「火神君」
「どした?」
「一発殴っていいですか」
「はぁあ?ちょっ・・・まっ・・・」
火神がすべて言い終わる前にマジバに悲痛な音が響く。
立ったままの腹を抱えながら、立ち上がり鞄を持って、ずぞぞぞと音をたて、シェイクをすする。
そのまま大股で店内を出る。
他の客には火神が一人芝居をしているように見えるだろう。なんせ自分は影が薄い。
確かに、人の名前に「っち」をつける黄瀬も悪い。
だけどよりにもよって、コックロッチ(しつこいようだけどゴキブリ)と聞き間違えるだなんて・・・
確かに自分の苗字に黒という字が入っているけれど、そんなのは関係ない。
黒子はおもむろに携帯を取り出し、メールを打った。
To:黄瀬君
今後一切黒子っちと呼ばないでください。
メールを受け取った黄瀬が「なんでッスか?!」と絶叫したのは言うまでもない。