小説


□火神が黄瀬を変人だと思った訳
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 「にしてもキセキの世代って変人ばっかだよな」


 マジバで火神がふと漏らした一言。
 それに対して黒子は思案する。
 確かに緑間のラッキーアイテムなどを見ると、そう思えるのも頷ける。
 あれはさすがにどうかと思う。
 だから火神に対して、
「それは今更な気もするんですが・・・・」
 と、言うしかなかった。


「まあそうだけどよ・・・」
 と、曖昧な返事を返す火神だが、黒子は少し気になって聞いてみた。
「どうしてまた急にそんな事聞くんです?」
「いや、初めて黄瀬にあったとき、親友を変なあだ名で呼んでんなと思ってさ」
 火神は黄瀬に「っち」をつけて呼ばれるのを嫌う。ただ、だからといってそれで人を変人扱いするのもどうかと思う。
 いくら沸点が低いとはいえ、火神もそこまで子供ではないだろう。
「まあ確かに人の名前に「っち」つけますからね」
「いや、それじゃなくて、それもあるんだけどよ」
「? なんですか」
「黒子っちがコックロッチに聞こえたんだよ。だからひでえ野郎だなぁと」

 コックロッチ・・・・
 なんだろう、この可愛気があるようでおぞましい響きは・・・・
 コックロッチ・・・コックロッチ・・・
 脳裏に黒くしぶとい生命体が浮かぶ。



・・・・・・ゴキブリ?



「火神君」
「どした?」
「一発殴っていいですか」
「はぁあ?ちょっ・・・まっ・・・」
 火神がすべて言い終わる前にマジバに悲痛な音が響く。
 立ったままの腹を抱えながら、立ち上がり鞄を持って、ずぞぞぞと音をたて、シェイクをすする。
 そのまま大股で店内を出る。
 他の客には火神が一人芝居をしているように見えるだろう。なんせ自分は影が薄い。

 
 確かに、人の名前に「っち」をつける黄瀬も悪い。
 だけどよりにもよって、コックロッチ(しつこいようだけどゴキブリ)と聞き間違えるだなんて・・・
 確かに自分の苗字に黒という字が入っているけれど、そんなのは関係ない。


 黒子はおもむろに携帯を取り出し、メールを打った。

 To:黄瀬君
   今後一切黒子っちと呼ばないでください。


 メールを受け取った黄瀬が「なんでッスか?!」と絶叫したのは言うまでもない。
 

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