小説
□アイロニー
1ページ/1ページ
人が生まれてくるのには意味がある。
その言葉を信じて生きた。
勝利を重ねた。
得たのは名声と
信頼と
孤高の地位と
孤独。
そんなときに僕は気づいた。
人が生まれてくるのに、意味は持たない。
逝去した音楽家が残した歌の後付け解説みたいに、都合良くつけられたいびつなデコレーションにすぎないと。
それでも失望はしなかった。
心のどこかで分かっていたからだ。
たぶん。
そして僕はこれからどうなるのだろう。
やるべきことは分かっている。
でも僕は、その舞台まで、上がれないのだ。