パラレル小説


□籠の外は籠だった
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 物ごごろつく前に、お金のために売られた。
 そこは密に兵士を育成することが目的の施設だった。
 毎日のように厳しい訓練が行われ、何人も死んでいくのを目にした。はじめは吐いたりしていたけれど、慣れればんてことはない。ただの動かなくなった人形だ。
 俺は髪の色から黄瀬という名前をつけられた。涼太という名前は自分でつけた。外に出られたときに、困らないように。出られるかなんて、わからないのに。
 いつしか、キセキの世代だなんて呼ばれるようになった。その頃に青峰っちや緑間っちと出会った。みんなアクが強くてびっくりしたけれど、同時に人のことも言えないな、と思った。
 他にも紫や黒が名前に用いられているのもいるみたいで。そして別棟に赤司という自分と同じようにキセキの世代と呼ばれている奴がいるのを知った。
 でも、別に会いたいなんて思わなかった。
 自分と同じ血のにおいの人間は、いくらでもいる。けれども自分を含め別格な奴らは一段とにおいがきつい。
 そんなのに会って、自分の嗅覚をこれ以上曲げたくなかった。


 pm12:00 食堂
「あー腹減った」
「青峰っち声がデカイッス」
「あの訓練のあとでよくそんな声がでるものだな。というより、お前またさぼっただろう。明らかに衣服の乱れが少ないのだよ」
「はあ〜?減ったもんはしょうがねえだろ。だいたいダリィんだよ。弱いやつら蹴散らしたって面白くも何ともないっての」
「まあそれは言えてるッスね」
 そういってちらりと周りを見回す。
 先ほどまでやっていた訓練はバトルロワイヤル形式の戦闘訓練。
 手を組むも良し。単体攻撃も良し。逃げ回るも良し。ただし一時間はずっと同じ部屋で戦わなければならない。当然死人だって出てくる。
 この訓練をするときに首に麻酔入りの首輪をつける。峰打ちの要領でそれにショックを加えると、麻酔が注入されて時間が来るまで眠ってしまうものなのだが、青峰はこれを悪用して、大抵自分で叩いて訓練中ずっと寝ているのだ。
 そしてこの訓練にはさらにルールがあり、眠っている者は死んだとみなされ、それ以上攻撃を加えてはいけないというものだ。。用は死人に構っている暇があるなら、より多くの敵を倒せということ。それがここでは求められている。
「どうせなら部屋わけのときにお前らと同じになれるように細工できねえかな」
「それは無理っすよ。上が管理してるんスから」
 力の拮抗しあうキセキの世代どうし、戦って死んだりしたら大きな損害であるため、決して同じ部屋には割り振られない。
 それが青峰の不満でもあり、現実だった。
 トレーに載せられた不味いメシも、殺伐した雰囲気も、それが世界のすべてだった。
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