夢小説
□弐章
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-文久2年12月-
「ここが京の都…」
我知らず唇から、ほぅ、と感嘆の息が洩れた。
京に暮らす人々は誰も彼も、優しげな笑顔を浮かべている。
交わされる柔らかな言葉達さえ、この都にはしっくり似合っているような気がした。
でも…。
京の市中に漂っている空気は、不思議と冷えているように思える。
田舎者を排斥しようとする高い壁が、密やかに存在しているかのようで…。
「なんだか……」
ちょっと居心地の悪いような……。
「ううん……
気のせいだよね。」
京まで歩き通しだったから、心も身体も疲れているのかもしれない。
だけど、もちろん疲れているからと言って、ただ立ち尽くしている訳にはいかないのだ。
彼女が此処に来た目的−−…父親を捜すために…