三国書物庫

□軌跡
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貴方が愛の言葉を囁くことなど、期待はしていなかった

それなのに、貴方は私との別れに敢えてその言葉を選び去っていった

二度と会えない
二度と温もりを得られないこの苦痛を、貴方はどう思うのか

愛しては成らなかった愛さずにはいられなかった…

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆「趙雲殿」
背後から声をかけられ振り返ると、張遼が立っている
「…なんでしょう?」やんわりと微笑み返答する趙雲を痛々しい目で見つめる
「…その、食事はとられているか?」
「?」
偽り頷く
「体を見れば分かる…貴公は後を追われるつもりか?」
体はやつれ、以前の体つきとは程遠い変貌になっていた
「…なぜ?」
張遼は隠しきれない怒りを抑えながら
「生きようとする力を感じぬ…と言っている…」
趙雲は静かに微笑み、柱に手をつき視線を反らし
「…意味など…有りません…」
あの人の言葉が、心に残り、あの情景が脳裏を離れない
「張将軍!大変です!!」
突然現れた傭兵に向き直る
「どうしたと言うのだ?!」
息を切らしながら返答する
「…赤兎が!暴れて、手が付けられませんっ!!」
「すぐに参る」
走り出す張遼の後を趙雲が追い掛けようとす
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