三国書物庫
□揺るぎ無い想い
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愛されていた。
いつも私の前でのみ見せてくれた笑顔は、
戻らない…
恐れを知らぬ貴方が怖かった。
人の死を悲しまぬ貴方が怖かった。
貴方が命を落とすであろう事が、怖かった。
月明かりが射し込む部屋で、星を見つめる私に、貴方はこう言った『俺が天下を取ったら、全てをお前にやろう…』
いつもなら人を“貴様”と呼ぶ貴方が、私をそう呼ぶ。
「私は…貴方が生きていて下されば、何もいりません。」
貴方は皮肉に笑う
「お前だけだ…俺に生きろ等と言うのは」
気持ちは嘘ではない。貴方は沢山の人を殺し皆に”猛将“と恐れられているのだから。
貴方は私を手招き、その腕に抱き髪に口付ける。
私は目を閉じ、貴方の温もりを感じる。
「どうか…その約束、お守り下され」
約束を交し、それを頭の中に浮かべたのは、隣でもがき叫ぶ貴方を見た時。
貴方と共に逝けるなら私も本望だ。
貴方の放つ赤い滴が私の回りの雪に染みを作って行く
『この星も、全てお前の物になる…』
ええ、呂布殿…
『張遼、愛している』
私も…愛し、慕っております。
それから幾年も過ぎ、私は空を見上げ、また貴方を思い出す。
揺るがない忠義
揺るがない愛情
その全てを貴方に…