三国書物庫

□求め合うには遠すぎて
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求め合うには遠すぎて想いが辿り着けないなら
せめて貴方を抱き締める夜よ
止まらないで―…
「覚悟は…出来ているのか?趙雲」
張遼の手が伸ばされると髪にふれる、一瞬震える趙雲に不満ではなくこう問わずに居られなかったのだ。
「…はい。」
「急がなくて良い。私は貴公を大切にしたい、それだけだ。」
趙雲は張遼の顔を見る、その瞳はうっすらと潤んでいる。
張遼は苦笑しながら頬に触れ、
「…そのような顔は、しないでくれ…私が切なくなるよ」
武人としての趙子龍を知っているだけに張遼には耐え難い表情だった。
しかし、そんな彼を愛してしまったのも確かだった、呂布を慕っていたものとは、全く違う想い―。
「…さあ、まだ傷も癒えていないのだ、もう少し休まれよ」
趙雲はうなずき、ゆっくりと寝台に体を沈める、張遼はその横に椅子を運んでくると座り腕を組んだ
「あの…張遼殿?」
「どうなされた?」
「…私は…蜀の武人です。魏に居ることなど許されないと、思うのですが…」
ため息混じりに返答する
「…気にしなくて良いと、申し上げたはずだが?」
「…すいません」
張遼はゆっくりと立ち上がり、趙雲の頬に手を触れ、その唇に唇を重ねまた椅子に座り手を握る
「私はここにいるから安心して休まれよ」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆しかし、無情にもその時は来てしまった
「殿が…貴公を蜀に返すと…申された。」
趙雲は床に力無く崩れる、張遼は片膝をつき深いため息をつく、
「…私には、引き留めることは出来ぬのだ…すまない」
「…嫌です…」
張遼は溜まらずに趙雲の体を抱きしめ
「私とて…貴公を失うことなど考えたくは無い!しかし…」
どんなに、愛しくても離れなければ成らないことも、分かりきっていた、目頭に熱を帯び涙が頬を伝い落ちる、「こんなに…愛しい」「…張遼殿…」
静かに向かい合い唇を重ね、見つめ合う、
「ならば最後に私の願いを聞いて下さい…」「?」
「私を抱いて下さい」しばしの沈黙―、拒む理由はもう無い、ただ今は互いの存在を刻み合うことしか残されてはいなかった。
「私は…そういった経験が…全く無いのだが…それでもいいのか」趙雲は黙って頷き
「…私が…先導いたします…慣れてはおりませんが」
震える手が張遼の衣をゆっくりとはがしていき不安と猛りでむき出しに成
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