三国書物庫

□背中合わせ
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互いが同じ場所に居るのに
互いを知らない背中合わせ
探らないし、探れば何かが壊れそうで
知りたいと思う気持ちは…ー。

のんびりと馬を駆いいつもの場所に立ち寄る

水音と鳥のさえずりのみの静かな場所

戦に疲れ平穏を求めこの場所に来ている
しかし、今日は何かが違う

大木の後ろに人の気配と寝息、微かに血の臭いが平穏を打ち壊す

同じ国の者か敵軍か姿を見て後者であれば戦闘は免れない。
緊張感に包まれながらも大木の反対側に座る、一息つき目を閉じるが胸の動悸が収まらない

「…いい天気だ」
裏から声がしたのはそれから暫くしてからだった

自分に話しかけているのか、独り言なのか返答に困っていると、相手が続ける。「…気配で分かるが…敢えて聞かん」 微かに聞き覚えのある声ー。
しかし心当たりは敵軍にしかない

「…ええ…良い天気です」
多く語れば認識される、此処に来るときは戦の事を忘れようと丸腰で来る事にしている

「…心が落ち着くとはこういう事か」
好奇心のうらはら恐怖に襲われる

「ええ…まぁ」
(誰なんだろう…)「…この場所は気に入った…交える気はないから安心しろ」頭の中で紐解いていくー。
向こうの馬が小さく鳴く
甲冑の音が聞こえ、馬の蹄の音と共に徐々に小さくなっていく。
敢えてその残像を確認することもせず、大きな息を吐く。
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