三国書物庫

□軌跡
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け白い筋が残っている(…泣いていたのか)趙雲がここに来て数年が経つ、
戦の折りに負傷し倒れていた所を張遼が連れてきた
やがて趙雲に興味を持った呂布と趙雲が関係を深めるまでにそう時間はかからなかった。
しかし、時は無情にも二人を引き離す形になった。

猛将呂布の死を持って。
武を振るうことでしか存在を見い出せない呂布に訪れた転機、
人を愛するという感情はその手を鈍らせ、己の死を招いた。

しかし、誰も趙雲を憎む者はいなかった
気まぐれな呂布の機嫌を損ね、射たれたものも少なくない。
それをしなくなったのは、常に後ろに付いていた趙雲の姿が彼を変えたのだった。

貂蝉を失った悲しみを怒りに変えた呂布を慰め、ただ寄り添い癒すだけの存在が、愛情へと変化を遂げるまでに趙雲は様々な苦痛を味わってきた

愛の無い、欲求を見たし、怒りを納める器。
それが思わぬ形で愛情に変化した
己をかばい深い傷を負った趙雲の体の傷がそれを物語る

床ずれて少しはだけた衣の首筋にはその傷跡が生々しく残る

張遼は赤兎から趙雲を離し抱き上げると静かにその場を後にした
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