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□頬を伝うもの。
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いつか叶うと思っていた恋。
でもそれは一瞬にして"幼なじみ"という境界線で終わってしまった。
―――数日前。
『俺、マネージャーと付き合うことになったんだ…』
「マネージャーって…鈴木さんのこと?冗談でしょ?
だって佐藤って人が好きって………」
『まぁそうだったけど…、マネージャーは俺のこと選んでくれたわけ。』
「そう、なんだ…。よかったじゃん!あんな可愛い子、大河にもったいない!」
『バカにしてんの?』
「あははっ」
私は無理やり笑顔を作った。
…いや、笑っていないと泣いてしまいそうだから。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
それから少しして、離れた場所から笑い声が聞こえた。
楽しそうな笑い声。
チラッと見ると、とても幸せそうな顔をしている大河が視界に入った。
私は瞼を閉じた。
何も聞きたくない、見たくない。あんな2人の光景を!
ふと涙が頬を伝ったのがわかった。
一度泣いてしまうと涙は止まらなくて、次々に溢れてく。
私は周りに気付かれないように、息を殺して泣いた。
「う……っ…」
今日で泣くのは終わりにするから。
明日からはきっと、いつも通りに笑って2人を向かえられるように、頑張るから。
頬を伝うもの。
(今日の涙はとてもしょっぱすぎるの)