Long of P
□紅紫の花弁
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―山吹色と碧の池に 紅紫の花弁落ちる…―
世界は混沌に満ちていた。
人々はまるで狂ったように互いを騙し合い、憎み合い、傷つけ合っていた。
そこに、幸福などあるわけもなく、ただただ、哀しみと憎しみといった負の感情だけが色濃く渦巻いていた。
誰も何も信じなかった。
いや、信じることをやめてしまった、のだろう。
この混沌の渦巻く世界で、一体誰が互いを全てを信じられようか。
『愚かな人の子……。いつまで哀しみ、憐れみ、苦しみ、憎しみを繰り返すのか…。』
茨の門により隔てられた異なる世界。
そこで憐み嘆くは、人の世の混沌を覗き込む人ならざる者たち。
『シアン、俺はもう我慢が出来ない。このまま見ているだけはもう御免だ。』
『待って。何をするつもりか、なんて聞かない。でも。あなたがそんなことしたって…』
瞬間。
光が溢れた。
『いやだ!!行かないで!!!僕を一人にしないで!!』
『ごめん、シアン。』
世界が山吹色と碧の光に包まれた。
『やだ!!いやぁぁぁぁぁ!!!!』
『シ…ア……』
途端、世界に紅紫の花弁が舞い落ち、混沌とした世界が正常なるものへと変化した。
人々はその様をこう呼んだ。
“Magenta”マゼンタ、と………
世界を正常なる清らかなるものへと戻す神の力、と。
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