小さな星を見つめて

□救いの手
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「ちょっといいかな」


そう言って手を引っ張られ、私は突然のことに上手く話せない。


「え、あ、あの…折原く」

「黙って」

「う……うん」


―折原くん…?
そう疑問符を何個も浮かべながら連れてこられたのは、屋上だった。


「…」

「…」

「…、あの、」

「田中さんてさ、」

「うん…?」

「付き合ってたあの男と別れたんでしょ?」

「なっ何で知って…っ!??」


そう、私は昨日まで付き合ってた彼氏と別れたのだ。
原因は彼氏の浮気。

実は、未来はそれを付き合い始めた頃から知っていた。


「嫌なんだよ」

「へ?」

「その顔。いつも泣きそうな目してる」

「そっそんなこと」

「なくないから」

「……」

「俺、田中さんの悲しそうな顔見たくないから」

「っ…!」

「俺で良ければさ、」


胸貸すから。
そう言った折原くんの顔はとても真剣で。

―折原くんはずるい。
そんな風に優しくされたら誰だっていい方に逃げたくなるに決まってるよ…。


私はどうしようもない気持ちに襲われ、しどろもどろしていると、急にフワッと甘い香りに包まれた。
そう、折原くんに抱き締められていたのだ。


「折原く、ん……ぅ…ぐす…」

「気づいてたんでしょ?始めから」

「そう…でも、いつかこっちを向いてくれる日が来る、って信じて……」

「うん」

「それなのに…信じてたのに…!」

「もういいから」


折原くんはずっと私の話を聞いてくれて、頭を撫でてくれている。

彼の優しい振る舞いに、未来はある決心をした。


「お…折原くん、」

「何?」

「もう、………」

「え…?」

「もう、何もかも忘れさせて…!!」

「お望み道理に。未来…」

そう言って、折原くんは私に優しく口付けた。


「俺は、絶対に未来を悲しませたりなんてしない。
  だから……
今は黙って俺について来ればいい」



Fin.
2012.05.01.

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