小さな星を見つめて

□二人の輝き
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「いっ…臨也っ」

「何?」

「何、じゃない!ちょっと…待って」

「早く行かないと始まっちゃうよ?花火」


そう、幼馴染みである臨也と私は花火を見に行く途中。
街中をぶらぶら歩いていて、たまたま見つけた花火のポスターがきっかけだった。


“臨也、これ…”

“行きたい?”

“う…でも今からじゃ間に合うか…”

“急いで行けば間に合うよ。行こう”


という感じで今に至るのだが。

電車はラッシュ時、道路もかなりの渋滞だ。
仕方なく走って行くことにしたが、街中もすごい人だかりだ。
少しでも立ち止まれば、臨也を見失ってしまいそうだ。

…なんてことを考えていたら、本当に見失ってしまった。


「あ、れ…?臨也……?」


周りを見回し、右往左往する。
だんだんと不安が積もっていく。


「…臨也ぁ…?
 きゃっっ…!??」


急に視界が真っ暗になった。
誰かに手で目を塞がれたのだ。

―この大きくて温かい手は…
この、優しい手は―


「だめじゃん。逸れちゃ」


――紛れもなく、臨也の手だ。


「未来…急にいなくなるから何処へ行ったのかと思ったよ」

「ごめん…」

「もう逸れちゃだめだよ」

「うん」

「さ、行こうか」


そう言って不意に手を繋げられる。
臨也の温かい手に安心感さえ覚える。

30分後…。
やっとのことで着いたが、臨也は彼女の手を引き、また違う場所へ向かう。


「臨也…?何処行くの?」

「俺、穴場知ってるから」


―少し離れた廃棄ビルの屋上。
私たちはフェンスの近くにあったパイプ椅子に座った。

ドーン…ドドーン……


「あ、丁度始まったみたいだね」

「ここ、凄くキレイに見えるね。臨也、本当に何でも知ってるんだね」

「そう?君限定だよ」

「えー、嬉しいけどなんか恥ずかしいな…」


何だか照れ臭くなってきた。
ふと、花火を見るフリをして臨也を見たら、臨也もこっちを見ていたらしく目が合ってしまった。


「何?」

「えっ?!あ、いや…その…… 私の幼馴染みが臨也で良かったなーって」

「俺もそう思う」


彼の顔は花火の光に照らされてるからか、眩しいほどに輝いていた。



Fin.
2012.4.28.

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