雪のかけら(逃亡編)


□切ない日々を忘れない
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長今は、大長今の装飾が美しい衣服を身にまとい、大きな木の下に立っていた。
いつまでもこの大きな木は変わらなかった。
宮中の奥の人気のない場所に、この木は在った。
この大きな木の下で、密かに政浩と逢瀬を重ねた事を思い出していた。

長今が大長今に就任した直後、政浩は流刑になった。
長今は、現実を受け入れるのに、何ヶ月も要した。
ほぼ毎日、一緒に時を過ごして来た恋人をもぎ取られたのだ。
心の痛みは計り知れなかった。
しかし、王様の主治医として毎日出仕しなくてはならない。
長今の心の傷は、中々癒やされる事はなかった。
長今自身、みるみる痩せて行くのが分かった。
政浩に愛された肉体も、貧弱になって行くのを止める事が出来なかった。
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