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□夕方の物語
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こぽこぽとお湯を入れて少し置く。

俺のは早めに注いで、あの人のはもう少し置いてから注ぐ。


色違いの湯呑みに少し色違いのお茶が湯気を立てて、注がれていた。



「…お前はどんたけ茶を淹れるのに時間をかける気だ?」

「遅かったですか?」

「遅せぇから言ってんだろうが、」

「すみません、丁寧に淹れるの好きなんで」


そう苦笑いを浮かべながら俺のより色濃いお茶が入った湯呑みを阿近さんに渡した。

彼は俺の返答に呆れながら湯呑みを受け取って、淹れたてのお茶を口の中に流し入れる。


「美味しいですか…?」

「…まぁまぁだな」

「…良かった」

「でも、遅せぇ…」

「……スミマセン、」


あめとむちとはこの事か
相変わらず、喜ばせたかと思うとすぐに地に落とす人だとヘコんだ。


お茶の良い香りが部屋に充満する。


「和みますねー…、」

「爺臭せぇ…」

「酷い…」


酷い言葉とは裏腹に声は優しくて、俺も酷いとか良いながら微かに笑った



「でも、俺お茶の香りって好きだなぁ…」

「お前は爺か?」

「…酷いですね、でも落ち着きません?」

「普通だな…」

「可笑しいな…」


俺はこんなに落ち着くと言うか和むのに、彼はそうでもないらしい。
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