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□夕方の物語
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首を傾げながら、また一口お茶を流し込んだ。


「うーん…俺だけなのかなぁ」

「分からなくはねぇが…そこまで和まねえな」


「そうですか…、俺は風呂に入れてもでも良いくらいなのに」

「風呂…?」

「だって、湯に浸かりながら楽しめたら一石二鳥って感じがしません?」

「しねぇだろ…、」


「牛乳風呂が有りなら、お茶風呂も有りだと思うのに、」

「根本的に間違ってねぇか?」


「…それだけ落ち着くって事なんですよ」

「無理やりだな…」


やっぱり呆れられて、2人同時にお茶を流し込んだ。


気付くと空は不思議なグラデーションで、赤や橙色が青に飲まれて混ざり合っていた。


「…穏やかですね」

「まぁな…、」


あんなに先程までくだらない話で盛り上がっていたのに、今2人の間にあるのは静けさと穏やかさ


青に呑まれていく明るい色たち、
何となく、今の気持ちと一緒だと思った。


次第に青は混ざり合って紫になっていった。


「…阿近さんと俺の色」

「あ?」

「空が其れっぽくないですか?」

「馬鹿か…それより茶」

「…はーい」


修兵が茶を淹れに行ったのを確認してから、空を仰いだ。

いつしか空は濃い紫、


『アイツの瞳と俺の瞳』


そんな混ざり合った感じがしなくもない。


そんな穏やかな紫、



決してアイツには言わないが、この空は俺たちの色だと思うし、アイツの淹れた茶だけは妙に落ち着く。


決して言ってやらない。

けれど、この時間と感覚はお前との時間を共有できたみたいで気分が良い


そんなお茶が美味しい、夕方の小さなお話…、
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