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□月光の真実
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俺は不謹慎だ…、
じゃなきゃ狂ってる。
月明かりに浮かぶ阿近さんの鋭い眼光。
背筋にぞくりとしたものが通る。
(逃げれない…)
逃がすまいとする鋭い紅い瞳、
素直になんかなりたくないのに、素直になれと瞳が言っていた。
「俺は修兵を逃がすつもりはねえ、本当は縛って部屋に閉じこめても良いんだぞ?」
再び背筋を通る何か。
恐怖?
(違う…っ)
これは…、
歓喜だ。
俺は不謹慎だ…、
じゃなきゃ狂ってる。
月明かりに照らされてるこの神に俺は不謹慎な感情を抱いている。
あんな言葉に俺は心を乱されるなんて、
俺の感情を、揺れる瞳だけが素直に表していた。
「修兵、お前はどうしたい?」
「何度も…言わせないで下さい」
「俺から逃げたいか?」
「だからそういっ…!」
唇に当たる何か、それはあの時のように激しく、でも、満たされる口付けだった。
驚きで目を閉じることすら出来なくて、阿近さんの端正な顔に魅入ってしまう。
「っ…!」
じっと彼の顔を魅入っているといきなり開かれた紅い瞳、素直になれない俺を裁くように真っ直ぐ見つめてくる。
(嗚呼…もう、堕ちる)
小さな防波堤はいとも容易く崩れていった。