□愛の記憶、
3ページ/71ページ




名も顔も知らない貴方に毎夜、夢の中で出逢う。












俺の下に名も知らない男の身体がある。

その男は身体を桃色に染め、俺が与える快楽に唯乱れていた。


男とは思えない細い肩、細い腰、そして艶やかな喘ぎ声…、



名も、ましてや顔すら知らない男を俺は唯ひたすら抱いた。


面白いくらい跳ね上がる肢体、高らかに奏でられる艶やかな声、全てが俺を魅了してやまない。


俺は見知らぬ、ましてや男に確かに有り得ないくらい欲情していた。


名を知りたい。
顔を見たい。

でも、出来ない。
否、出来なかった。



俺は下にある男の身体を突き上げながら、思考を違うところに飛ばしていた。


『…俺は何で男なんて抱いてるんだ?』


別に俺はホモじゃない。

バイに近いかもしれないがどっちかと言えば、ノーマルだろう。

そりゃ女が大好きとまでは言わない。
何故なら抱くのも付き合うのも面倒だからだ。

それにしたって、同じ抱くと言う行為なら女の方が断然良い。


何が悲しくて同じ身体をした男を抱かなくてはいけないのか。

それこそ、謎だ。


そう思っているのに、下に居る男の乱れる姿を視界に捉えるだけで、有り得ないくらい欲情して、我慢が効かなくなる。


抱きたいと思ったのは他でもなく自分だった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ