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□愛の記憶、
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名も顔も知らない貴方に毎夜、夢の中で出逢う。
俺の下に名も知らない男の身体がある。
その男は身体を桃色に染め、俺が与える快楽に唯乱れていた。
男とは思えない細い肩、細い腰、そして艶やかな喘ぎ声…、
名も、ましてや顔すら知らない男を俺は唯ひたすら抱いた。
面白いくらい跳ね上がる肢体、高らかに奏でられる艶やかな声、全てが俺を魅了してやまない。
俺は見知らぬ、ましてや男に確かに有り得ないくらい欲情していた。
名を知りたい。
顔を見たい。
でも、出来ない。
否、出来なかった。
俺は下にある男の身体を突き上げながら、思考を違うところに飛ばしていた。
『…俺は何で男なんて抱いてるんだ?』
別に俺はホモじゃない。
バイに近いかもしれないがどっちかと言えば、ノーマルだろう。
そりゃ女が大好きとまでは言わない。
何故なら抱くのも付き合うのも面倒だからだ。
それにしたって、同じ抱くと言う行為なら女の方が断然良い。
何が悲しくて同じ身体をした男を抱かなくてはいけないのか。
それこそ、謎だ。
そう思っているのに、下に居る男の乱れる姿を視界に捉えるだけで、有り得ないくらい欲情して、我慢が効かなくなる。
抱きたいと思ったのは他でもなく自分だった。