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□短編集
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(いつもの帰路)
また季節は巡って、冬を待つ世界がやって来た。
吐き出す息は白く、周りの木々は色づいていた。
俺はいつもの格好であの人を待つ。
室内に居ても良いんだろうけど、この時期の空が好きで外で待っていた。
背中に落ち葉を踏みしめる音ともに愛しい人の霊圧を感じて、自然と頬が緩んだ。
「…また、そんな格好で…風邪引くぞ」
呆れ声ともに近付いて来て香った独特の煙草の匂いにどこか安心した。
「そんなの今に始まった事じゃないですよ?」
背を向けたまま笑って言ったら貴方はさも呆れたように溜め息を吐き出して、俺は繰り返されるやり取りを思い出して、また笑った。
ぴったりと後ろに貴方の気配を感じる。
「…ったく、貸してやるよ…」
俺が風邪引きそうだとか言われながらふわりと感じる貴方のぬくもりを纏った上着を掛けられた。
「…阿近さんの匂いがする」
そう言ったらお前は変態か、なんて言われて小突かれた。
昨日と同じ感覚に飽きもせずに笑って、少し冷えた俺の手と、いつも体温の低い貴方の手を繋いでいつもの帰り道を帰った
とてもたわいのない話をしながら、昨日と同じ道を昨日と同じように、一緒に帰った。