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□均衡
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(俺だけを、俺だけを…?)
嗚呼、成る程、魅力的なんてものじゃない、これはそう、敢えて言うならば
「なぁ」
「何か?」
「お前は子供じみた独占欲を信じるか?」
「っ…」
息を呑んだ音がした。
真夜中でなければきっと聞こえなかっただろう。
どうやらこの生き物は妙に聡いらしい。世界の無情さを理解しているからこそ脆さをさらけ出すことが出来ず一生懸命抑えている。それがあの危うさに繋がっている。
(まぁ理解したところでどうにかなる訳でもねぇが…)
危ういのには変わりないのだから。
合わさった視線から入る目の前の情報は、瞳を揺らしながらも気丈に振る舞おうとしている様で、それが魅力的であり愛しいとさえ思った。
「阿近だ、お前は?」
「…修兵」
聞いた名を心の中で一度だけ繰り返して、
「俺のモノになれ、修兵」
「なっ//」
「自分の想いを満足に吐き出せない世界で」
「…?」
「独りで居るのはもう疲れただろ?」
「…!」
そうだ、泣けば良い。泣き方を知らないお前に俺が泣き方と泣ける場所を与えてやるから、今は泣けば良い。
泣き声を殺して泣く修兵を抱き寄せて己の腕に閉じ込めれば、修兵は俺の服を握って抵抗せずに腕の中に収まった。
(嗚呼、堕ちた)
(もう、これは俺のモノだ)
自分の想いを
押し殺したまま、
いつか壊れるくらいなら
俺がいっそ壊してやる。
だから、お前は
俺のところに堕ちてこい、
自分を押し殺せない
籠の中で一生愛してやるよ。