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□祭りの匂い
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買ってから、袖を通して無かった浴衣に着替えて現世に旅立った。




大きな祭りでは無かったが、それなりに人はいる

屋台の良い匂いがお腹を減らした。

「…でもな、義骸ないしな」

買えない…と言うか見えない。



「…阿近さん」


「修兵?修兵だよな?」


聞き覚えのある声がしたこの声は、今日の祭りを教えてくれた…

「…一護」

「何だ、やっぱり来たんだ。あれ義骸は…」

ないのかと続く言葉は、修兵の瞳からこぼれ落ちる涙によって消えた。


「えっ泣くなって…!」


焦った一護の声がする…俺は、此処でも迷惑を掛けてるんだ…。

『…本当に救いようがない…馬鹿だな俺』


真新しい浴衣の袖で涙を拭いて、無理やり笑った


「恥ずかしいところ…見せたな…悪い」

やっぱり、帰るよと続く言葉は、一護に抱き締められたことで消えてしまった…

「…っ、一護離し…!」

「……修兵」


何も言えなくなる…余裕の感じれない一護の声で

『…俺は、何がしたかったんだろう。』

迷惑ばかり掛けて…




人は段々まばらになってきて、誰もこちらを見ていなかった…俺は見えないけど…


『…阿近さん』



「てめぇら、何してやがる。」


幻聴だろうか、今まで
ずっと聞きたかった声、逢いたかった人…。


「離れろ。それとも、浮気か?修。」

幻聴じゃない。

「阿近さ…ん」
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