□君への…
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程なくして開けられた扉


『ったく、誰だよ…』






「っ…ぅう…!」


『…泣いてるのか?』






「…情けないな」



『檜佐木の声か…?』




間が空く。
まるで、過去の出来事を振り返っているようだった…。


何となしの確認、バレないように檜佐木かどうかを確認した。


やはり、檜佐木その人で


瞳から止めどなく涙が伝っていた…。



今すぐでも、駆け寄って話を聞いてやりたかった

今すぐでも、大丈夫だと

抱きしめてやりたかった


でも、俺にはそんな資格はない。
恋人でもないのだから。



彼は、過去の出来事から現実に目を向けたのだろう、急に口を開いた。


とても、辛そうに…。






「…阿近さん、貴方を好きになってごめんなさい貴方を愛してごめんなさい…。」


耳を疑った。

『…檜佐木が…俺を好きだ?』

嘘だろう?
何かの間違いだろう?

それとも、ドッキリだろうか…?


だが、檜佐木の様子から見て本当なのだと分かった。



一瞬、柄にもなく喜んだ
何だ、両思いだったのかと。
だが、それも一瞬だけ。

次の言葉のせいだ…。




「…許して、今日だけだから…今日だけだから、今日だけは、愚かな俺を許して…。」


もう、二度と口にしないからと。



あぁ、コイツは辛かったんだろう、辛い思いをしたんだろう…。

きっと、俺も知らないような過去に…。




俺の立ち入る隙もなかった。


それが、とてつもなく悔しかった…。
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