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□均衡
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微妙な均衡を
中に秘めながら、
前を見るくせに
誰よりも後ろを
気にしてきたから

気になって仕方ない。








はっきりした定時が果たして本当にあるのか分からない技術開発局。
それが俺の仕事場だった。

今日も局長によって理不尽に増やされた仕事が俺に残業という二文字を突き付ける。
殺してやろうかと何度も思ったが、あれでも一応上司なので踏みとどまった。その上仕事を片付ける俺はなんて健気なのか。
…自分で言って気持ち悪くなったが。

そんな理不尽の塊である、押し付けられた仕事がやっと終わったのは夕方なんかとっくの昔に過ぎた真夜中だった。
研究室に鍵を掛けて、自作の煙草に火をつけて吸い込みながら家に向かえば、どこかで風を切るような音が聞こえた。

いつもの俺ならそんな音を果たして気にしたのだろうか?
それでも気になった俺は音のする方へと足を進める。

月明かりが人の気配がしない廊下を照らしている。
嗚呼、月が綺麗だと思った、月見酒も良いかも知れない、そう思うのに足は着実に風を切るような音の方へと。


どこの隊の敷地内だろうか、庭のようなその場所にその正体は在った。
まるで舞うようなそれは風を切る音だけを響かせて、唯一その音だけが現実味を醸している。

嗚呼、綺麗だと思った。
同時にとても


危ういと思わせた。



まるであれには触れてはいけないかのような錯覚さえ覚えさせられる。


(何故?)
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