ブチコミ

□桃色吐息
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春、それは冬から目覚めた生き物達が様々な形で生命の形を表しだす季節。

たまたまジークが今回、ハル達と泊まったこの村も同様に、雪や土に隠れて息を潜めていた様々な生き物が顔を出し、活発に行動していた。


中でも、一際、目を惹いたのは、この土地には珍しい桜の木であった。
何でもこの村の村長が、旅先で気に入って購入したモノらしい。


ジークは春の暖かな日差しに包まれる心地よさを肌で感じながら、
ゆっくりとその桃色に染まる、桜の木の下に腰を下ろした。

ゆっくりと散る桜が、雪のように舞い、ジークの中の時間を止める…。


春とは、不思議だとジークは思った。
まるで…独特の炎で戦う彼のように…


ジークは一度そこで思考を停止した。

『はぁ…』

今は忘れよう、せっかくいい気分なのにアイツのことで心を埋め尽くすのは…
どうせ、気分が滅入るだけなのだから…


アイツと俺には、
『何もない』のだから…



ジークが再び春の心地よさに目を閉じた、その頃、その村の中を周りを気にしながら歩く『アイツ』こと、シュダの姿があった。

シュダは目的の人物が中々見つからないのに少なからず苛立ちを覚え始めていた。

『ちっ…ジークの奴どこにいる…?…せっかく俺が、』
「会いに来たって言うのに…」





しばらくそのまま探していると、目的の人物が見慣れない木の下に居るのが見えた。
遠くからでもジークだと分かる透き通った蒼の髪。


近づいて初めて気づく。

『寝てるのか…?』
「…珍しいな」


普段は決して、警戒して外で寝たりしないジークが寝ていると思うと、つい笑ってしまう。

自然とこぼれ落ちる笑みが、どれだけ自分がジークを愛しく思っているか、改めて気づかせる。


例え、ジークが自分の想いに気づいていなくても。


目の前の蒼は舞い散る桃色に微かに染められて、消え入りそうだ…───


『…────。』


舞い散る桃色を捕まえて
ジークの唇に被せて、愛しさを込めて上から自分のと重ねた…。







『…────』


暖かな感触に目を覚ますと…



「…シュダ?」

「…お目覚めか、お姫様?」

「誰が、お姫様なんだ。…それよりも今の」

「あぁ、お姫様を起こすには必要だろ。…それともやはり嫌だったか?」



「っ…嫌ではない///」

「ふっ…そうか、安心した…」












桜越しでも良い、
貴方の吐息を
感じられるなら。


だから、気持ちを繋げてくれた桜に感謝して、
キスをしよう。



「「愛してる」」


    ―end―





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