ブチコミ

□君の背。
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君の背が、


前に有るのは
気に入らない。

我が儘かもしれない

出来るなら、
君の背が、


自分の背に
有ることを。











いつも、目の前に
お前の背が有った。




「…ジーク」

「………」


話しかけても、聞こえていないのか俺の先を歩いたまま彼は止まりもしなかった。


『…否、聞こえていたはずだ』


じゃあ、何故彼は前を見たまま歩き続けるのか?

何故、呼び掛けに応えずに…、

『俺に背を向けたままなのか…』



自問自答を繰り返しても答えが返ってくるわけもなく、唯空しくなっただけだった。



「……ジーク…」





「どうした?」

「Σ…否、」

「…何をビックリしている?」


まさか返事が返ってくるとは思いもせず些か、近くで聞こえた声にびっくりした。


「…ったく、人を呼んでおいてビックリするな」


「…あぁ」

「どうした?」



呼んでおいて?
先程も読んだのに、お前は反応しなかった。


「…先程も呼んだ」

「俺をか?」

「あぁ、」



そう思わなかったのか、急に彼は考え出す。


『…本当に聞こえていなかったのか?』


数秒の間を要して、出された答えに俺は再び驚かされた。



「…その時なら、丁度考え事をしていた。」


「考え事?」


俺と歩いていて考え事?




「あぁ、今日の夕飯を考えていた。」

「…は?」


「…だから、今日の夕飯を考えていた。」


お前は好き嫌いが無さ過ぎて逆に困るから。


『…それは、』




いつも、目の前に
お前の背が有った。


俺はそれが嫌だった。


近くにお前を感じれないから。


でも、本当は
近くに有りすぎて、

俺の事を考えてすぎて、


周りが見えてなかっただけ。


本当はこんなにも
近くて、

背中を合わせるよりも、近かった。




「…俺はジークに愛されているな」

「今更だっ…!/////」
 

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