ロックマンエグゼ

□小さな粒の中に
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探してる、探してる
ずっと探してる。

どこにいても探してる。


まるでそれが身体の一部みたいに、俺は探してる。


足りないよ、早く、速く、ハヤク、足りないそれを埋めるように。

早く、速く、ハヤク、足りないそれを俺は探しに行く。













ローラースケートで走り抜ける街は車ほどじゃないにしろ、それなりの速さを持って流れてく。
PETからは危ないからもう少しスピードを落とせと注意が掛かるけど、気にしない。
気にしてられない。

だって、速く、早く…ほらこんなにも求めてる。それなのにゆっくりなんて無理な相談だと思う。


自宅からほぼ信号にも捕まらず飛ばしてきたおかげで予想以上に目的地に早く着いた。
それなのにまだどこかで早く、速くって叫んでる。

いつか、新記録を出しそうな勢いだ、なんて小さく笑った。


一番大きなビルに入る。目的地がここだから仕方ないけど、自分でも時々場違いだなとは思うんだ。
だからって入るのを諦めたりはしないけど。


受付に進んで、いつものように挨拶をすれば、受付のお姉さんは営業スマイルとは別にふわりと笑って、連絡をしてくれた。

(…お姉さんの営業スマイルが崩れるくらい来てるってことだよな)


速く、早く…嗚呼、もっとハヤク、

連絡がいったのか、お姉さんはまたふわりと笑って、どうぞお進み下さいと俺なんかにまで丁寧に伝えてくれた。
こういうところは大きい会社だなと思う。
なんか行き届いてるというか…洗練されてるっていうか…難しくてよく分かんないけど、まぁそんな感じ。


(…でも、これで…早く、速く…もっとハヤク…)













エレベーターに乗って、一番上まで。他の階なんて押したことない。だって必要ないし、もちろんこれからも。


(…これからも、か…いつまでこうしてられるのかな)


誰かは『不変』などこの世にはないと言うけど、変わらないことだってあると思うんだ。


(俺の気持ちとか…そりゃアイツはどうか分からないけどさ)


誰にも止められることなく進む箱に現実感を無くしてく。
だからだ、急にこんな気持ちになったのは、それかこんなに早く、速くって言ってるのに会えないからだ。


軽い音と共に開いたエレベーターから無意識に降りて、奥の扉に進む。
いつもならノックもせずにすぐに入るのに、今日は何故か入れない。

(違う…入れなくなったんだ)


長いような短い時間あの箱に一人で独りで居たから。急にテンションが下がった。

心では早く、速く、ハヤクと急かしてるのに。


なんか急に泣きたくなるってこんな感じなんだなんて、らしくないことを思った。
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