SLAMDUNK


□ヒナ鳥は空を焦がれれど
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花道が二万本シュートを終えて、俺たちは家へと帰った。



家へとついて、一服をする。
口に煙草を咥えながら、鞄の中を漁り、洗濯物を取り出す。



(こういうのは早く洗わないと忘れちまうからな)



簡単な着替え以外はあまり入ってない鞄は軽い。
ポンポンと着替えを出して、何となしに数を数えれば一枚Tシャツが足りないことに気がついた。



「あー…学校か?」



否、間違いなく学校だ。それも今まで居たバスケ部がよく使う体育館。




「あー…」



非常にメンドクサイ。
今日はバイトはないが、もういい時間だ。
今、行ってもただの不審者だろう。

例え、学校が開いていても今日は非常に疲れている。

そうそうにやることをしたら寝てしまいたかった。



「…バイト前に行けばいいか」



うん、そうしようと自分を納得させれば、大分短くなった煙草を吸い込んだ。























適当な時間に設定した携帯のアラームが室内に響き渡る。
その音で目が覚めれば、俺は暫くぼんやりしてから部屋のカーテンを開けて、窓を開けた。

煙草に火をつけ寝起きの一服を楽しみながら今日の予定を頭で整理する。



(とりあえずTシャツか…)



優先事項まで整理が進む頃には短くなった、煙草を灰皿に押し付けて、洗面所へと向かった。






原付を走らせて、体育館の扉を開ける。
主もいないはずの体育館だが、意外にも開いていて好都合だった。


体育館の中にあるバスケ部の部室。
その扉を開けながら、バスケ部でもないのに入りなれている自分に、自嘲気味に笑う。



目的のブツはすぐに見つかった。
あまりの早さにもう少し、遅くにここに来ればよかったとため息をつく。



(どうすっかねー…バイトにゃ早いし)



主のいない部室に、そして体育館。
何て静かでガラリとしているんだろうと思った。



目的もないまま、体育館内を彷徨けば用具室が目の前に立ちはだかる。



鍵は流石に閉まっているだろう、そう思ったのに湘北は相当無用心なのか、こちらも開いていた。



「…ありゃま」



正直、開かなくても良いと思ったが開いたからには仕方ない。
目線を上げれば、籠に入ったバスケットボールが見えた。



「…暇潰しにはなるか」



適当に取り出したバスケットボールを見よう見まねでつく。



「これがドリブル、で、これがシュート、っと!」



投げたボールはちっとも入らなかった。
否、真剣に入れようとしたわけでもないが。



それから何度かボールを投げたが入ったのは少しだけ。
これが大切な試合中ならかなりのブーイングものだろう。



「はー…」



体育館に人の気配はない。
それでも目を閉じれば、まるでそこにいるかのように赤い髪がちらつく。

ただ、あの頃と違うのは特徴的なリーゼントではないこと。
喧嘩に明け暮れていた拳は今はボールを添えるだけになっていることが違っていた。



喧嘩に明け暮れていた頃に比べれば健全だし、生き生きしていて、見ている俺にとっても嬉しいものがある。

それでも、その場に…



再度投げ打ったバスケットボールがバスケットゴールに入らず重力に従い、落ちていった。



「難しいもんだな…さっぱり入んねーや」

(…なんて、な…)



「あーっびっくりした!洋平君!!」


「ん?」




人の気配と、ここ最近で聞き慣れた声に振り返れば、ハルコちゃんとその友達…藤井さん?が居た。



ころころと表情が変わるハルコちゃん。
花道が好きな女の子。

だれだって、こんな女の子を好きになるだろう。


それでも、俺は…、
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