血界戦線

□嘘吐きと嘘吸い
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嘘吐き。
嘘なんて、…。



















「少年、コーヒー淹れてくれる?」


「はい」


「あ、砂糖やミルクは要らないけど少年の愛情なら入れてくれてかまわないよ」


「…はいはい」


「あー本気にしてないな!」


「はいはい(…嘘吐き)」


「ちょ!少年!?」


「はいはい」




僕はスティーブンさんに背を向けてコーヒーを淹れるため部屋を出た。
皆が戻ってくるのはもう少し後だから変な会話を聞かれずに済んで安堵した。

まぁ、あの人が周りに聞かれるなんてヘマはしないだろうけど。



神々の義眼保有者。
それがそんなに大切なのだろうか。
最愛の妹の視力と引き換えの『特別』など、未だにクソ食らえだなんて思うのに。

それともそんな思考すら読まれての戯れ言なのだろうか?



俺には『嘘』が分かる。
と言ってもそんな大それたものではなく、嗚呼、嘘吐いてるなーくらいの認識だ。


これは昔からだ。
自我の芽生え、思春期故の疑問。
そんな時に『嘘』について考え、気付けば『認識』していた。


だから神々の義眼云々なんか無くても『嘘』くらい見破れるのに。

それなのに、…




「…あの人ときたら」




安心したいのだろうか?
嘘を吐くことで?

それとも見破られていると実は分かっていて、わざと嘘を吐くとか?

本気にしないと安心しきって?




「(馬鹿馬鹿しい…誰がその手に乗るかってんですよ)」




例え、『嘘』と知られた上で嘘を吐くとしてもそんなの知るか。
『嘘』は見破れても、その『内』の機微などこれっぽっちも読めやしないんだ、こっちは。




「それでも…」




嘘を吐き続け、安心しようと魂胆なら。

俺は




「(アンタの『嘘』を吸い続けてやる)」




もし、それで溺れたら、アンタの『嘘』でいっぱいになって息も付けなくなったら

その時は




「責任とってくださいよ」




『嘘』でしたなんて言わせてやんないすからね。




「(それまでせいぜい『嘘』を吐き続ければいいんだ)」




まるで呪いのようにコーヒーを注いだ。






















「あーあー、まだかな………早く『溺れて』よ、少年?」




『嘘』だと分かった上で僕の『嘘』で身動きできなくなった君が欲しいのに。




「難儀だよなー…」




『嘘』を理解してもなお、僕を好きになる奴しか愛せないなんてね。



君はそこまで気付いてないだろうけど。




「…もう少し、もう少しできっと手に入る。」




それまではせいぜい足掻いてね…。

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