血界戦線

□蝙蝠拾ってしまった。
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異界と現世が交わる街、HL。
その街には永遠の虚と呼ばれる場所がある。
そこには、ある組織が宿敵とする血界の眷属が群れを成していると一部で噂されている。

それ故にか、このHLでは他の国などに比べ、血界の眷属の出現が多く見られる。



そしてある日の昼、秘密結社ライブラでは血脈門の開放が報告されていた。
しかし、その報告は自分にとって直接関係はなかった。
自分はある組織…秘密結社ライブラの副官的存在を上司に持つが、ライブラの事務所に出社したことはない。
上司命令でこっそり敷地内などに侵入することはたまにあったが、それも本当に、『たまに』だ。
故に自分の上司が血脈門の開放の連絡を受けようと、自分には知ることもなければ、必要もないことである。





スティーブンの私設部隊の一人である自分はその日も、わりと『暇』であった。


仕事はスティーブンが連絡してこなければ、ない。
仕事の間隔はまちまちだったが、給金は充分貰っていたので、無理に他の仕事をする必要がない。
それに暇だからといって、他の仕事を入れて『本職』が疎かになっても困る。
だから仕事時に動けるように鍛錬はしても、基本は『暇』を受け入れていた。

それでも、家にずっと居るのは苦痛で不便だったので、買い物がてら昼食をどこかでとろうと、街を歩いていた。

異界と現世が交わる街は、混沌として、煩い。
煩いのが苦手ではなかったが特別好きでもなかったので、治安の悪い路地裏を歩くことにした。
何より、目的地にしようと決めた場所に近い。

路地裏は薄暗かったが、仕事柄、暗い場所に慣れていたので、何も問題なかった。
路地裏をさくさく歩いて行くと、地面に黒い毛玉が落ちているのを見つける。
手の小指くらいの毛玉だ。
何となく興味を引かれて、顔を近づけて正体を知る。


「……コウモリ?」


自分の声が狭い路地裏で思いの外響いたが、気にすることなく、それを拾った。
多少、衛生面も気になったので、ハンカチごしではあるが、自分としては優しくコウモリを拾った。

コウモリは弱っているのか動かない。
それでもちゃんと暖かい。
命に別状はないようで少し安心した。

予定の昼食はテイクアウトに変更して、買い物リストも増やした方がいいだろう。
そこまで考えて、歩き出していた足を止めた。


「(…コウモリは雑食?肉食?)」


はてさて、コウモリは何を食べるのか。
そもそも、勝手に元気だと判断したがこれは獣医に見せるべきか。
とりあえず検索した方が良さそうだと、携帯を取り出した。
数ある情報の中から、手の中にいるコウモリに近い見た目の情報だけを集めていく。
情報に寄ると、このタイプのコウモリは雑食らしい。
簡単、とは言えないが面倒は看れそうな状態だと判断できたので獣医は止めた。
それにどうしても職業的に『知らない』医者は拙い。
簡単な医療道具や検査道具は『仕事』で使うものがあるし、これなら何とかなりそうだ。

ふと、これは本当にコウモリなのかととも思った。
まぁ、万が一コウモリではなかったら、その時はその時だと諦めて、再び歩き出した。


「(…スーパーで生き餌は買えたかな)」


買えない気がする。
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