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□均衡
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(何故?)
(何故、そう思わせた?)
(舞うような様が綺麗だから?)
(音だけが現実味を醸しているから?)


(嗚呼、違う…そんな幻想的なものじゃねぇ、あれは…)


誰よりも弱く脆いあの様を気付いて欲しいと思っているくせに自分は気丈に振る舞うからだ。
思っているくせに自分はそれに知らないフリをして気付こうとしないからだ。
だから妙なバランスが生まれて危ういのだと感じさせる。


ならば、俺はその様をどうしたいのか?
あれは微妙な均衡を保つから生きて居られるのだ、それを教えたが最後あれは壊れる。

微妙な均衡が保っていられるからこそアイツは生きていられる

なのに、敢えて教えたくなるのは俺も壊れている生き物だからなのか…。


どちらにせよ、微妙さを保って生きてきたアイツに興味をそそられたには違いなかった。


壊したいのか、新たな何かを生みたいのかは最早、俺にもよく分からなかった。

嗚呼、でも触れたい。
それは実験体に触れようとする科学者の心理にも酷似していて酷く危うい。


(嗚呼、成る程どちらも危ういのか…)
(なら触れたところで迎えるのは破滅か融合だ)


壊れてしまうのか、まるで別の危うさを持って均衡を保つかのどちらかだろう、



触れなければそんなリスクを背負わずに済むだろう?
それでも触れたいのか?



(嗚呼、壊れても良い…だから俺はアレに触れたい)
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