‡宝‡
□時計
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時を刻むモノ。
それは止まった時ですら刻み続ける。
「コレ、直せませんかね?」
言って伺うように相手を見れば、あぁ?と気もなさそうに返ってくる返事とはいえない返事。
まだコッチを見るわけでもなく、阿近さんは目の前の機械に何かしらを入力している。
何を入れてるのか、なんてちらっと見ただけじゃわからない。
記号。
まさしくそれだ。
記号の羅列。
何が書いてあるのかなんて全く分からない。
「…………阿近さ〜ん…。聞いてますか〜?」
「うぜぇ」
一蹴。
酷い。
どうやら急ぎか何かの仕事(?)であんまり俺に構ってる暇もないようだ。
ちぇ、と拗ねた舌打ちを漏らしながら、それでも傍を離れる気はない。
ぐるぐると、今は動くこともないそれを弄んでみる。
「あれぇ〜?これはこれは檜佐木さんじゃないですかぁ〜」
ぽやぁ〜っとした可愛らしい声に、そちらの方を振り返る。
見て納得。
眼鏡のおさげの人だ。
そういえばまだ名前を聞いたことがないなと思いつつ、確かに俺は檜佐木であることに変わりはないので適当に(いや失礼とは思ってるんだけど)返事をした。