‡宝‡

□時計
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「どうしたんですかぁ?また阿近さんが構ってくれてないんですかぁ?」
「いや、ちょっと壊れ物を見て欲しくて」

……実際には確かに構ってもらってないので否定することはない。
否定することはないのだが、阿近さんだって仕事がある。
それくらいのことは分かっているつもりだ。
よっこい、と阿近さんの足元から立ち上がる。
あははは〜檜佐木さんてオジサン臭い〜と笑われた。
それにも若干傷ついた。(俺はまだまだ若いです!!)

「コレなんスけど」
「おやぁ〜?これはこれは」

時計ですねぇ、とこれまたぽやぁ〜とした口調で。
そう、時計。
現世の任務の折、ちょーっとした隙を見つけてずっと気になってた時計。
そんな高級なんじゃない。
素っ気ないけど、でも存在感がある。
だから気になって、買ってしまったものだ。

「直せませんかね?」
「…う〜ん、そうですねぇ〜…」

ぐるぐると俺と同じように見回して、加えて軽く振ったり裏側を見たり。
その最中チラっと何かを横目で見て。

「コレは難しいですね〜。とてもアタシ達には直せません」

きっぱり、簡潔に。
返事にそんなぁ〜とがっくり肩を落とす俺。
直らないのならば、やはり現世の職人に頼まなければないのだろう。
だがしかし、開発局の人間(?)に直せないと言わしめたものを直せる職人などいるものだろうか。
どう頑張っても難題。
それに頭を悩ます俺に、眼鏡っ子が思いついたようにぽんっ、と一つ手を打った。

「やっぱりここは、阿近さんしか頼れる人いませんよね!!」

え?と思ったと同時に、今まで話に加わっていなかった阿近さんも、はぁ?と此方を振り返った。
そして、互いに顔を見合わせる。
眼鏡っ子だけがニコニコと笑顔だ。
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