小説(3冊目)

□本日、快晴
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 教室内には先生の声とノートにシャーペンを走らせる音だけが響いていた。
 冷房が入る程の暑さではないけれど、全開にされた窓からは生暖かい空気しか入ってこなくて、ブレザーは椅子の背を覆っている。
 しわがれ気味の声が文法を説明し、生徒達は息を潜めて耳を傾ける。
 少し、退屈な時間。

 軽く眠気が襲ってきて、欠伸を噛み殺しながら窓の外に目を向ける。そこには真っ青な空と真っ白な雲が一面に広がっていた。
 綺麗なライオンズブルーに友人の顔を連想する。渋谷は今頃どうしてるかな?
 眠い目を擦りながら授業を受けているんだろうか。
 あるいは僕と同じように空を見て、こんな良い天気なのに屋内でボーッとしてるなんて勿体ない、なんて唸ってるかもしれない。
 その様が容易に想像出来てしまって思わず顔が緩む。
 今日は渋谷と公園に寄って帰ろう。
 合流する頃には少し翳ってしまっているかもしれないけれど、空は僕達を暖かく迎えてくれる筈だ。
 ベンチに座ってジュースを飲んで、のんびり空を見上げよう。爽やかなコントラストを眺めながら他愛ない話をしよう。
 今日は天気が良いから、たまには奢ってやるのも悪くない。

 先生に当てられた生徒がカタカナ混じりの英語を紡いでいる。一陣の風が入ってきて、束ねられたカーテンを揺らす。
 正面に目を戻すと壁に備え付けられた時計の針がカチリと動いた。
 もう少しで今日の授業が終わる。



end
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