小説(1冊目)

□夏の電車の中で
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 電車に揺られて外を眺める。流れていく景色はどこか別世界のようだ。
「渋谷ー、寝てもいー?」
 2人掛け座席に隣り合わせて座っていた村田が寝ぼけ声で言った。快適な室温と揺れにウトウトきたらしい。まぶたが半分閉じかけている。
「別に許可取んなくてもいいから寝ろよ。着いても起こさねえけどな」
「意地悪だなぁ。いいよー自分で起きるから……」
 できんのかよ、と突っ込む前に完全に目を閉じおれの肩に頭をもたせかけた。
「お前壁の方に寄りかかれよ。窓側陣取ってんだから」
 返ってくるのは規則正しい寝息だけだ。
「ったく……」
 これ見よがしに溜め息を吐く。どうせ聞こえちゃいないだろう。
 村田の無防備な顔ってのは普段ほとんど見る事はない。そう考えると大変興味深い。
 お、結構まつ毛長いんじゃねえの?とか思いながらしばらく寝顔を眺めていた。

 クーラーの冷気で少し冷えてきた身体に、布越しに伝わる村田の体温が心地良かった。



end
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