小説(1冊目)

□雪見
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「あ、渋谷、雪積もってるよ」
 村田が窓の外を見て感嘆の声を上げた。
「どうりで寒い筈だよなぁ」
 部屋の中が急にひんやりとした気がして微かに身震いする。そしたら後ろから腕が伸びてきて、背中にドシッと重みが掛かった。
「……何してんの?」
「肉布団」
「村田言う程肉ないじゃん」
「じゃあ貼るカイロで」 
 しれっと出てくる単語がちょっと面白くて噴き出してしまう。とりあえず温めてくれようという意思はあるらしい。
「ずっとくっついてんのか?」
「そう。おはようからおやすみまでずっと一緒」
「邪魔だなぁ」
「酷いや渋谷」
「でも……ちょっと暖かい、かな?」
 触れた瞬間はひやっとした布に互いの体温が伝わって、じんわりと温もっていく。
 その温もりから離れ難くて、しばらくの間くっついたまんまでじっと雪を眺めていた。

「って言うかさぁ、村田暖房入れてくんねぇの?」
「暖めすぎ・冷やしすぎは御法度なんじゃなかったっけ?」
「ああある程度までは良いんだよっ」



end
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