小説(1冊目)

□傷付く言葉
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「ウェラー卿」
 そう呼ぶとアンタは少し傷付いた顔をした。
 おれは黙ってほくそ笑む。表情に出さないよう注意を払って。

「何故、そう呼ぶんですか?」
「アンタが大シマロンの使者だから」
 そうだけど、そうじゃない。
 アンタが傷付いてくれるから。
 ずっとポーカーフェイスのアンタが胸の内を覗かせてくれるから。

 おれは魔王でアンタは敵で。
 こんな近くにいるのに触れる事さえ叶わない。
 だからおれはアンタを呼ぶ。言葉で触れ愛撫する。
 アンタを傷付ける為に。

 でもこんなの、おれが受けた裏切りに比べれば可愛いもんだろ?



 ――そしておれ達の絆は壊れ続ける。



end
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