小説(1冊目)
□ありがとう
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ありがとう、渋谷。
僕と友達になってくれてありがとう。
好きになってくれてありがとう。
そんなの感謝されるような事じゃない、ってきみは言うだろうね。
それでも僕は本当に嬉しかったから。
僕たちは別の関係にもなり得た筈だ。
ただの元同級生。
魔王と大賢者という肩書きだけの関係。
破壊のための関係。
でもそうならなかったのは、やっぱりきみのおかげだから。
秘密を打ち明けた時、互いの不幸自慢をし合ったよね。
小突き合い普通に笑い合えた。
その事にどんなに救われたか、きみに判るかい?
前の生では精神異常者として蔑まれ、悪魔と罵られた事もあった。
あちらの魔族にしても、必要なのはあくまで大賢者としての魂と記憶だ。僕そのものじゃない。
僕を『村田健』として、全てひっくるめて受け入れてくれたのは渋谷だけだから。
だから、きみにありがとう。
心からの感謝の気持ち。
end