小説(2冊目)

□最良の日
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 今日はついてない。

 授業中居眠りしてて当てられるし。……まぁこれはちゃんと答えたけどね。
 欲しい本の発売日だった筈なのに最寄りの本屋に置いてないし。
 自動販売機で炭酸ジュースを買おうとボタンを押したらスポーツ飲料が出てくるし。
 全くもって、ついてない。



 微妙に落ち込んで帰ったら、マンション前に渋谷がいた。
 幻でも白昼夢でもなく、本当に渋谷がいた。
「え、あれ、渋谷? どうしたのこんな所で」
「村田を待ってたんだよ。宿題教えてもらおうと思ってさ。……あ、もしかして何か用事があったとか?」
 不安そうな顔をしてみせるから、僕は慌てて首を振る。
「ないないそんなの! 上がって上がって!」
「おう、お邪魔しまーす」



 きみがいるだけで僕の心は晴れやかになる。
 きみと話しているだけで温かな幸福が生まれる。

 きみが僕の隣で笑っていてくれれば、それが僕にとっての――最良の日。



end
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