小説(2冊目)

□ひなたぼっこ
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「いい天気だなぁ……」
 ベンチに座って空を見る。広がる青に思わず目を細めた。
 突然肩にズシッと重さが掛かる。
「しーぶや♪」
「村田……いきなり何なんだ」
 首に回された腕が締まって少し喋り辛い。
 村田はおれの首にしがみ付いたままベンチを回り隣に座った。
「秋って人恋しい季節だと思わない?」
「別に思わねーけど」
「つれないなぁもう……えいっ」
 あっさり答えると村田は不満そうに唇を尖らせる。
 そして首を絞めていた腕を外しゴロッとおれの膝に頭を載せた。
「むむ村田! おまっお前何考えて……!」
「んー、渋谷の膝気持ちいいーv」
 驚いてどもるおれの腰をギュッと抱き締める。下腹に村田の顔が当たってちょっとヤバイ。
「いや、気持ちいいじゃなくて離れろって」
「いいじゃん、ちょっとだけ」
 ね? と甘えるような視線を送られる。何だか脱力して髪に指を突っ込んでやった。
 柔らかいクセっ毛が指に絡む。
「村田ってホント猫みてー」
「猫じゃないもん」
「みてーだって言っただけだろ」
 眉を顰めて前髪を摘むとホントの猫みたいに目を細めて笑う。
 秋と言っても今日は少し肌寒く、村田の体温が心地良い。
 ちょっとくらいならいいか、と頬を緩めてまた空を見上げた。

 ――今が草野球の練習中で、チームメイト達がギョッとして見ていた事に気付くのは、また別の話。



end
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