小説(2冊目)

□渇水
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 炎天下の通学路。
 村田と有利はフラフラと、それぞれの自宅に向かって歩いていた。
「暑ぃー……」
「そうだねぇ」
「喉渇いたー」
「もうちょっと歩いたら自販機あるから頑張れ」
「……あのさ村田、喋って気紛らわせてるだけだから。真面目に返さなくていいんだぞ」
「そうなの?」
「そう」
「ふーん」
 有利の答えに村田は無表情で相槌を打つ。しばらく考えるように押し黙った後有利の腕を引いた。
「…………渋谷」
「ん、何――?」
 振り向いた有利の顔を両手で包む。村田はそのまま唇を重ね、舌を挿し入れた。
「んんっ!?」
 舌を伝って村田の唾液が有利の口に流れ込む。有利が唾液を嚥下した事を確認し、ようやく村田は唇を離した。
 息の整わないまま至近距離で互いを見つめ合う。
「はあ、はあ……どうよ、少しはマシになったろ?」
「はあ、はあ……なな、んな訳あるか! 余計酷くなったわボケ!」
 満足気にニヤリと笑う村田に対し、有利は真っ赤な顔を顰める。
「ふーん、そう……。じゃあもう1回!」
 村田は顔を強く固定しもう1度唇を合わせようとする。それをすんでの所で押し止め、有利は思い切り怒鳴った。
「やめろって、もう充分、充分だから! っつかここ天下の公道ー!!」



end
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