小説(2冊目)

□偉大な太陽
1ページ/2ページ

「え〜、寒いからヤダって〜」
「あのな村田、人間太陽の光を浴びないとビタミン生成されないんだぞ」
「いいもん、サプリメントで補給するから」
「ふざけんな!」

 休日を良い事に1日中家にいる気満々だった僕を、渋谷が無理矢理外に連れ出した。
 外は昼間の光が降り注いでいるが、もう3月だというのに気温はまだまだ低い。
 隣を歩く渋谷は身を縮める僕を連れ出して一応満足したらしい。痛い程に掴んでいた僕の腕を離し、気持ち良さそうに伸びをする。
「うーん、日の光があったかいなぁ」
「風は冷たいけどね」
 上着を着込んでいても肌を撫でていく空気はやはり冷たい。それでも太陽の発する光は暖かくて、僕も思わず空を仰いだ。
「やっぱ太陽ってのは偉大だよなぁ」
「……うん、そうだね」
 渋谷に目を向けると太陽を仰いだまま微笑んでいる。その横顔が眩しくて、僕は目を細めて相槌を打った。
「何その微妙な間。しかも何で人の顔見て意味深な顔してんの」
「別に〜?」
 僕の相槌が不満だったようで、渋谷は口を尖らせて僕を振り返る。それを適当にはぐらかして僕は視線を外した。

 見えた先では親子が仲良く戯れている。
 あの笑顔を守るのは、渋谷、きみなんだよ。

 渋谷に目を戻すと顔を顰めたまま僕を軽く睨んでいる。
 僕達の太陽に敬意を表し、僕は渋谷をえいと小突いた。



end
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ