小説(3冊目)

□惑い月
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 窓の外には綺麗な月。
 部屋の明かりはなく、ただ月明かりのみに照らされた渋谷が僕の下で身悶えた。



「月見をしようよ」
 学校帰りに僕の家に遊びに来た渋谷を、今日はせっかくの中秋の名月だからと引き留めた。
 コンビニで月見団子も調達してきたし、2人きりの月見ってのも風流で良いんじゃないかってね。
 部屋の明かりを全部消してベランダに続く窓を全開にする。
 並んで窓の桟に腰掛けると夜空には白黄色の月が輝いていた。
「綺麗だなぁ」
「うん」
 2人で月を見上げる。でも内心では触れ合う肩と腕に意識を奪われていた。
 半袖から覗く腕は僕よりも若干温かい。身動ぎする度に肌が擦れてドキドキして落ち着かない。
 月は人を狂わせるって言うから。こんな気持ちになってもしょうがないよねと自分に言い訳して渋谷を引き寄せた。
「村、田……ん……」
 少し驚いたようにこちらを見た渋谷の唇にそっとキスをする。一旦離してもう1度、今度は舌を深く絡ませると、渋谷は僕の腕に縋りつき鼻から抜けるような吐息を吐いた。
 艶っぽくてどうしようもなく、煽られる。
 唇を重ねたままゆっくりと渋谷の身体をフローリングに横たえる。そのままシャツを肌蹴ていくと、渋谷は焦って僕の肩を押さえ唇が離れた。
「村田、お前何して……っ」
「渋谷が欲しくなっちゃったんだ」
 ふわりと笑ってみせると困ったように視線が外される。露わになった首筋にキスをするとピクンと筋肉を収縮させた。
「ちょ、待て、誰かに見られたら……」
「月しか見てないよ」
 月は僕の分身だ。誰にも秘密を打ち明けたりなんかしない。
「駄目、だって。声が……あっ……」
「じゃあ口塞いでてあげる」
「んうっ……ん……!」
 声が漏れる事を心配する渋谷の唇をキスで塞いだ。くぐもった喘ぎが直接僕の中に注ぎ込まれてゾクゾクする。
 渋谷が逃げられないようにどんどん退路を断っていく。
 酷いヤツだよね。ごめんね。
「っ……渋谷、好きだよ」
「むら……は……んんっ」
 グッと腰を押し付けて渋谷の声、身体、全てを貪る。
 幻想的な光の中で、僕達は淫らに交わった。



end
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