小説(2冊目)

□五十歩百歩
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 ベッドの上で一糸纏わぬ姿の村田と有利が絡み合っている。
 村田は有利の下肢に唇を寄せ水音を立てていた。
「むらたっ……も、イク……!」
 全身を強張らせ有利が村田の髪を掴む。
「イっていーよ、ほら」
「あ、あぁああっ!」
 応えるように村田が強く吸い上げ、有利は村田の口の中に欲望を爆ぜた。
「はぁ……はぁ……」
「渋谷、気持ち良かった?」
「……訊くなっ」
 精を飲み込んだ村田が目を合わせようとすると、有利は顔を朱に染めて逸らせる。
 村田は苦笑して有利の頬に軽く口付けた。
「畜生、村田ばっか余裕な面しやがって」
「えー、僕もそんな余裕ある訳じゃないよ?」
 睨みつけられても台詞とは裏腹に涼しい顔をしているように見える。
「……おれもやってやる」
「え、ちょっ渋谷!?」
 低く呟いた有利が村田の下肢に顔を寄せる。
 動揺する村田を後目に勃ち上がりかけているそこを咥えた。
「んむ……っ」
「ふ……っ……渋谷っ」
 村田の愛撫を思い出しながら有利は舌を動かし唇を滑らせる。
 拙いながらも確実に快感を引き出され村田の身体も熱くなっていく。
「渋谷……ん、くっ……」
(あ、ピクピクしてる)
 口の中で反応を示すそこに有利は小さく笑う。
「ちょっと可愛いかも……」
 思わず心の声を外に漏らしていた。
 村田はピタッと動きを止め不穏な空気を漂わせる。
「え……村田……?」
「しぶや……男の《放送禁止用語》を咥えながらその台詞ってのはあまりにも酷いんじゃないかなー?」
「え? ……あ、いや、別にそういう意味で言ったんじゃなくてだな……っ」
 やっと村田の怒りの意味に気付いた有利は慌てて弁明しようとする。
 だが村田は言葉を遮り感情をぶつけた。
「渋谷の方が可愛いサイズのくせにー!」
 一瞬、部屋の空気が凍る。
 その後2人揃って怒りの熱気を上げていった。
「お、前それこそ言っちゃいけない事だろー!」
「へー! そー言うって事はちゃんと自覚あるんだー!」
「違うわー! 大体村田も似たようなモンじゃねーか!」
「何だとー!」
 不毛な事を喚き合う。
 2人にとって、これが有利からの初めての奉仕だったとかいうのは最早どうでもいい事だった。
 ちーん。



end
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