小説(2冊目)
□思い言葉
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投げ出された身体に手を這わせる。ゆっくりと優しく、掌に吸い付く感触を記憶するように。
先程限界近くまで追い上げられていた渋谷の肌は少しの愛撫で簡単に熱を増した。
「ん、ぁ……っく!」
「声、抑えないで」
渋谷は高い喘ぎを漏らしそうになりハッと口元に手を運んだ。その手を外させ代わりに唇を押し当て舌を貪る。
そのまま渋谷のものを上下に擦るともどかし気に身体を捩った。
「ふあっ、あ、やぁ……っ」
「感じてる声聞かせて。お願いだから」
「村、田ぁ……あ、んんっ……」
きみのどんな反応も逃したくないんだ。
頼りなく僕を見る目に涙が浮かぶ。その雫を舐め取り微笑むと渋谷は恥ずかしそうに目を伏せた。
この涙はきっと、さっきまでとは違う意味。
「可愛い、渋谷」
「か、わいく、なんか……」
「可愛いよ、すごく」
顔が可愛いって言うんじゃなくて、僕に見せてくれる色々な仕草が。縋るように背中に回された手の感触が、愛しい。
胸が締め付けられてどうにかなってしまいそうだ。
溢れ続ける先走りを指先で掬い取り、後孔に中指を入れて絡み付く内壁を擦り上げる。前立腺に触れると渋谷の身体は一際大きく跳ねた。
「や! やあぁ……!」
「ここが感じるんだね」
「ん……く、ぁ……あっ」
指を増やして本格的に解しに掛かる。傷付けないように、性急になりすぎないように。
中が柔らかくなり3本の指を楽に出し入れ出来るようになってから僕は指を引き抜いた。
「挿れるよ」
「あ、ぁ、ああ……!」
渋谷の足を抱えて下肢をゆっくり押し込む。温かく包まれる感覚が堪らなくて眉が寄り目を閉じる。
全てを中に収めて目を開けると渋谷も辛そうに、そして少し心配そうに息を弾ませていた。
思わず苦笑すると渋谷も微かに笑う。どちらからともなくキスをした。
「渋谷……好きだよ、渋谷」
「おれ、も……」
互いの肌を弄り高め合う。激しく抽挿を繰り返す。
「くっ……も、イく……!」
「あ、おれ、も……はぁ、あ、あぁああ!」
ギリギリまで引き抜き一気に押し込むと渋谷の全身が硬直し欲望を弾けさせる。
その締め付けに僕自身も精を吐き出した。
グッタリと力の抜けた身体をベッドに横たえた。視線を合わせて笑いかけると渋谷は照れ隠しに軽く睨む。
その顔が、すごく好き。
「渋谷、すっごく可愛かったー」
「なっ――!」
うっとりと手を伸ばし頬を撫でると渋谷の顔は真っ赤に染まる。その反応が嬉しくて僕は更に追い討ちをかけてしまう。
「こう何て言うの、少年特有のしなやかさとか奥で感じた時の壮絶な色っぽさとかもうねぇ――……」
「ギャー、黙れ! そんなんおれじゃねえー!」
「またまたー、とぼけちゃってぇ」
「違ーうっ!!」
僕のからかいに血が上り赤くなった耳を押さえて喚く。拗ねて身体ごと顔を背けてしまった渋谷を宥めるために、背中からギュッと抱き締めた。
これくらいは許してくれるよね?
照れ屋なきみは心を言葉で表せない。
思いを言葉に出来ないきみの、その反応が、たった1つの言葉だから。
クスクスと笑いながら渋谷の後ろ頭に頬を擦り寄せる。
僕は腕の中の愛しい存在に、心の中だけで囁きかけた。
end