赤に染めた雪 1

□2章 姫と狩人
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白雪を家まで送り届けた帰り、守人は携帯を弄りながら歩いていた。
白雪の家も守人の家も、学校から比較的近いとは言え、反対方向だ。1度、学校まで戻らなければ自分の家に帰る事ができない。なので、道中は時間がたっぷりある。
携帯は記憶容量があまりなく、処理スピードも遅いため、たいした事はできないが何もやらないよりはマシだ。
白雪のように、本を愛する者を殺そうとする奴は許さない。


「絶対に捕まえる。」


むしろ、俺が殺してやる。
守人にとって本とは世界の全てだ。本に没頭さえすれば、嫌な現実を一時忘れられる。それに、別世界の疑似体験は最高の快楽だ。この退屈な世界にいながら、刺激を与えてくれる。本とはまるで麻薬。1度ハマルと止める事などできない。
人から見れば、この考え方はおかしいと思うのだろう。しかし、これを理解し、共感してくれたのが白雪だった。だから、その理解と共感への恩を返すためにも、白雪を守りたい。犯人を捕まえたい。
守人は携帯を操作する。
犯人の声は若いものだった。ひょっとすると、守人と同じ年かもしれない。そんな年の奴が人を殺そうとする理由は一体何だろうか。
第一に考えられるのは恨み。しかし、白雪の性格や家庭状況を考えて、その可能性は少ないように思える。


「・・・やっぱり、それはあそこにハッキングしなくては分からない。」


恨みの線を考えるには、白雪の素性を全て調べなくてはならない。そうするにはそれが必要なのだ。
殺される理由を恨みと考えないならば・・・ゲームだ。
ここ最近、インターネット上で増えている殺人ゲームのサイト。サイトに掲載されている人物を殺せば何万円、などと告知しているくだらないものだ。だいたいは悪戯や詐欺の類だ。稀に、これを信じて殺人を犯そうとする者がいるのが厄介だが。
もしかしたら、白雪はどこかの殺人ゲームのサイトに載せられてしまったのかもしれない。それを本気にしてしまった犯人が今回、白雪を狙った可能性がある。


「・・・はぁ。」


守人はため息をついた。
どうして人はこんなにも馬鹿な事を考え出すのだろうか。次々とサイトを巡っていくが、気が滅入るものばかりだ。
一旦、ネットへの接続を切り、携帯をコートのポケットへと閉まった。
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