とある魔術の禁書目録CP

□Know Love
1ページ/11ページ

知ってる英語は?アイラブユー


Know Love


少し浮かれていた。
ステイルにしては珍しく浮かれていたのだ。
今回は任務でも何でもなく、学園都市に行けるのだ。
仕事も奇跡的に休みが取れたので、思う存分羽を広げられる。
実際は遊びに行くわけではないのだが、ステイルとしては似たようなものだ。
英語の家庭教師など。
発端は、土御門からの連絡。

『カミやんがどうしても英語を教えてほしいらしいぜよ。』

からかい混じりのこの言葉。
しかし、拒否する理由もなく、渋々ながら、内心では喜んで、頷いた。
土日、そして振り替え休日、この3日間。
集中的に当麻へと英語を教える事になった。
もちろん、泊まり込み。
インデックスと久しぶりに過ごせる。

「・・・何年振りだろうね。」

小さい頃はずっと一緒だった。
でも・・・。

「本当に、久しぶりだ。」

そんな風に柄にもなく浮かれていたのに・・・。

「・・・・・・。」
「すみません、ステイルさん。」
「過ぎた事はどうでもいい。」
「でも、絶対に楽しみにしてたよな。」
「うるさい。」
「でも、これはインデックスの気遣いであって・・・。」
「それは何回も聞いた。」
「・・・本当にすみません。」

上条宅にはインデックスはいなかったのだ。
どうやら、当麻の勉強の邪魔をしたくないという事で、知り合いの家へ泊まりに行ってしまったようだ。

「もう良いと言っているだろ。無駄口を叩いてないで手を動かしたらどうだ。」

楽しみを裏切られてしまったが、頼まれた事はちゃんとやろうとは思っているのだ。
まずは当麻が出されたという課題を先に片づけることにした。
当麻は未だに申し訳なさそうにしながらも、課題のプリントへと目を向けた。

「あーえーと、justiceは・・・。」
「分からない単語は自分で引けよ。勉強にならないからね。」
「はいはい・・・。」

当麻は億劫そうに辞書を開き、単語を調べる。

「あー、正義か。」

なるほど〜、と頷き、当麻はプリントに書かれた長文を目で追う。

「・・・・・・。」

その横顔をステイルは眺めてみた。
当麻が分からない、と躓かない限り、暇なのだ。
黙っていたら、悪くない、と思う。
さほど端正というわけではないが、人好きのする顔ではある。
性格は極度のお人よし。
だけど、途中で放り出すことはなく、その優しさを全うする。
強敵にも立ち向か勇気があるが、時々バカじゃないかと思うほどの強敵にも立ち向かったりする。
全てを一人で背負おうとして、こちらが一緒に背負うと言わなければ、押しつぶされようが何をされようがボロボロのまま闘うのだ。
気付けよ、と思うが、気付かないのが彼で、でも、そんな彼が放っておけずに、助けてしまう。
出会った人間のほとんどが、彼のお人よしに絆されて、好きになって、ついていく。

「・・・上条当麻。」

ステイルは静かに呼びかけた。

「ん?」

当麻は顔を上げ、首を傾げた。

「ここ、違うよ。これはひっかけで、ほら、ここが過去形になってる。」
「あ・・・マジかよ。」

は〜、と当麻はため息をつきながら、自分の書いた答えを消し、再びその問題を考え始める。
そんな真面目ぶった顔が普通にカッコいいと思う。
たくさんの人々に愛されている彼。
しかし、彼を独占できるのはインデックスくらいだろう。
彼は誰に対しても優しくて、誰だろうとも助けるから。
唯一は一緒に住んでいるインデックスだけ。
そこで、ステイルはふと気付く。
この3日間だけは、彼を独占できる事に。
神裂でもなく、五和でもなく、オルソラでもなく、自分が。
彼を独占している。
それは不思議な気持ちで、でも、なぜか嫌な気持ちではなかった。
ちょっとした優越感。
闘いも何もないから、感じる事が出来た感情。
こんなにも平和ではなかったら、こんな気持ちを抱く事はなかっただろう。

「また間違ってるんだが。」
「・・・えーと、どこでしょうか?」

しかし、ステイルはそんな事をまったく顔に出さずに、回答の間違いを指摘した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ