とある魔術の禁書目録CP

□Version Alpha side ステイル   移ろいに取り残される世界
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上条当麻という人間は極悪だ。
自分たちが大切にしていた少女を掻っ攫って行ってしまった。
阻止しようとした自分は殴られ、倒され、上条当麻に少女を盗られてしまった。
だから、容赦のない別れを突きつけることで、彼の無力さを思い知らせようとしたのに――――。


彼は、上条当麻は、少女を救ってしまった。


「東京を空爆!?」

最大主教の衝撃的な言葉に、ステイルは思わず声を荒げる。

「正気ですか!あそこには何千万という一般市民がいるんですよ!?」
「仕方があらぬのよ。東京に潜伏しているはずの上条当麻がこうも見つからぬというなら、全てを壊したほうが手っ取り早いというわけなるのよ?」

ローラは面倒くさそうに言う。

「既に連合軍は東京に働きかけ、半ば脅しだけど、了承はとってありけるのよ。ハワイ諸島ではアメリカ大統領が上条当麻の極悪の現場を直接見ているし・・・。ああ、イギリスでも同じような事をしけるわね。だから、米英両国の上条当麻処刑の熱は大きしなのよ。」

ふぅ、とローラはため息をつき、暑すぎて煩わしそうな顔をした。
暑いのは暖房が効きすぎたこの部屋か、それとも、異常に熱狂した上層部か。

「もう、我らでは、止められぬ所まで、来てしまったの・・・。」
「しかし・・・!」

まだ食い下がろうとするステイルにローラは何かを突き出した。

「ああ、そなたが心配しているのはインデックスなるわね。既に東京に潜入した必要悪の教会のメンバーが“保護をした”という報告がありけるわ。」

保護をした、と言っているのに、ローラが突き出したのは、“ヨハネのペン”だった。
口を出すな、手を出すな、そう言っているのは明らかだった。

「・・・神裂は?」

ステイルはここにいない同僚の名を口にした。

「・・・学園都市への攻撃が決定した。」

上司の端的な言葉で全てを理解したステイルは礼もせずに最大主教の執務室から出て行った。
神裂は所謂、上条派と呼ばれる者の一人だ。
インデックスや神裂、アニェーゼ、オルソラなど、自分は上条当麻に救われたと思っている人間達だ。
無実の人間への攻撃か、それとも、自分の恩人を殺すか。
インデックスを人質に取られた今、どちらかを選ばざる負えなかった神裂は、前者を選んだのだろう。

「・・・くそっ!」

ステイルはダンッと衝動のままに壁を殴りつけた。
自分の拳に鈍い痛みが返ってくる。
上条当麻は自分の気に入らない奴を殴り飛ばし、気に入った女を掻っ攫う極悪非道な人間だ。
なぜ神裂はそんな人間のために、一般人を攻撃する道を選んだというのだ。
ステイルも何度か上条当麻に出会っているが、思い出すのは―――必死で―――誰かを――――。

「・・・?」

不意に騒がしい声が聞こえ、ステイルの思考は中断した。
声が聞こえるのは、共同テレビがある休憩所。
そちらへ向かうと、かなりの人数が集まって、テレビを前に騒いでいた。
ステイルはテレビへと目を向け、しかし、すぐに逸らした。


画面の中で、東京の街が、燃えていた。
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